ロボット設計の勘所 ~軸と回転体の締結~

まえがき

こんにちは、SSSRobotsです。早速ですが、ロボットの設計をするとき、こんなことで困ったりしませんか?

  • シャフトにどうやってギアを取り付けていいのかわからない!
  • 歯車が空回らないようにしたい!
  • リンク機構を作りたいけど、リンクとヒンジピンの固定ができない!
  • 止めねじって何?
  • キーって何?
  • H7とかm6って何のこと?
  • シャフトの平面取りって何のためにあるの?
  • タイミングプーリーを使いたいけど、軸穴仕様にあるタップやキー溝って何に使うの?

今回はこうした疑問や悩みにお答えしたいと思います。

目次

  1. キーワードは「軸」と「回転体」
  2. 簡単に留めるなら「止めねじ」
  3. 止めねじの使い方
  4. 止めねじは緩みやすい
  5. 高負荷でも滑らない「キー」
  6. キーの使い方
  7. キーは加工が大変
  8. 自作できて締結力も強い「ノックピン」
  9. ノックピンの使い方
  10. ノックピンは邪道?
  11. 独自規格の「Dカット穴」
  12. Dカット穴の使い方
  13. Dカット穴は自作の回転体にしか使えない
  14. まとめ

キーワードは「軸」と「回転体」

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悩み解決のキーワードは「軸」と「回転体」です。軸はご存知の通り、回転を伝える丸棒のことです。しかし、回転体という言葉は聞きなじみがないかもしれません。回転体とは文字通り、軸に固定され回転するもののことです。具体的には、歯車、プーリー、スプロケット、カップリングなどが挙げられます。

この回転体ですが、設計のとき困ってしまうのが、固定方法です。歯車などを買ってきて軸に取り付けようとしても、穴が開いているだけで、このまま軸に入れるだけでは空回ってしまいます。どうやって留めればいいのでしょうか?

簡単に留めるなら「止めねじ」

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一番簡単に固定する方法は「止めねじ」を使うことです。JISの正式名称は「六角穴付き止めねじ」といいます。しかし長いので、止めねじ、いもねじ、ホーローセットなどと呼ばれることが多いです。

止めねじの使い方

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それでは実際に使い方を見ていきましょう。

使うものを上に示しました。上から順に、赤が軸、青が回転体、緑が止めねじです。軸を見ると、中心に平面になっているところがあります。これは「平面取り」または「Dカット」の加工がされた部分です。続いて回転体ですが、120度ずれて2カ所穴が開いています。この穴は、中心の丸穴まで貫通しており、「タップ」つまりねじ山が切ってあります。

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上が組み立てた図です。断面図を見ると分かりやすいと思います。上の止めねじと軸の接触部分が平面になっています。こうすることで、緩みにくく、軸に傷がつきにくい固定ができます。さらに、2本の止めねじを120度ずらして入れることで、バランスよく支持できます。

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120度に2か所平面取り加工をするのが理想ですが、軸加工で精度よく角度を出すのは大変です。そこで、角度を出しやすい90度にしたり、平面取りを1カ所だけにしたりします。平面取りをしないで、軸の表面に直接止めねじを締めることもあります。もちろん、固定力は下がっていくので、設計と加工の兼ね合いを考えましょう。

止めねじは緩みやすい

止めねじは簡単でよく使われる方法ですが、緩みやすいという問題があります。理由は止めねじの締結力が弱いからです。低負荷の締結には優れていますが、負荷の高いところには、止めねじは使えません。

高負荷でも滑らない「キー」

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そこで、負荷の高いところには「キー」を使います。キーはマシンキーとも呼びます。今回はキーの中でも平行キーに絞って説明していきます。

キーの使い方

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先ほどと同様に赤が軸、青が回転体です。緑のモデルは平行キーを表しています。軸と回転体を見ると、溝が彫られています。この溝を「キー溝」といいます。キー溝の寸法はJISで決まっているので、軸径に合わせて設計します。

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上に組み立て図を示しました。軸の溝にキーを入れて、回転体を差し込むことで固定します。図から感覚的にわかると思いますが、緩まずしっかりと締結できます。滑りもほとんどありません。

キーは加工が大変

キーでの固定は、締結力という意味では優れているのですが、キー溝の加工が大変です。特に、回転体のキー溝は加工できる設備が限られています。個人で加工するのは難しいかもしれません。設計するときは、加工が可能であるか確認しましょう。(僕はワイヤ放電加工機で加工しました)

自作できて締結力も強い「ノックピン」

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個人で加工できて、止めねじよりもしっかり留めるには、「ノックピン」を使います。ノックピンとは、JIS規格の「平行ピン」、「テーパーピン」、企業独自の規格の「ダウエルピン」、「だぼピン」などの総称です。今回は平行ピンのA種を使います。

ノックピンの使い方

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緑がノックピンで後は同様です。軸と回転体にはどちらも貫通穴が開いています。ポイントは、この穴両方とも精度よく加工することです。穴の公差は「H7」、平行ピンA種の公差は「m6」です。

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「公差」というのは精度を指定するために図面で使うものです。どんなに高性能な工作機械を使っても、ピッタリの大きさに加工することはできません。そこで、設計するときには寸法に幅を持たせます。その幅を指定するために、H7やm6といった記号を使うのです。

わかりにくいので、具体的に呼び径2 mm の平行ピンA種を使用する場合を見ていきましょう。穴の直径は平行ピンの直径と同じにするので、公差を指定してΦ2 H7と図面で書きます。これで穴の寸法を、2.000 mm ~ 2.010 mmに収まる大きさにする、という意味になるのです。Φ2 m6ならば、2.008 mm ~ 2.002 mmですね。

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上が組み立てた図です。軸と回転体を貫くようにノックピンを打ち込みます。一見抜けそうに見えますが、「はめあい」が「中間ばめ」の「打込」なので抜けません。

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「はめあい」は軸と穴の関係のことです。さっきの具体例で、穴の寸法が2.000 mm ~ 2.010 mmで、ノックピンの寸法が2.008 mm ~ 2.002 mmでした。もし、穴が2.010 mmで、ノックピンが2.002 mmならば、「すきま」があります。しかし、穴が2.000 mmで、ノックピンが2.008 mmならば、逆に「しめしろ」がある、つまり食い込むような状態です。このように2つの状態が起こりうる関係を「中間ばめ」といいます。また、特にH7とm6のとき「打込」といいます。

加工するときは、少し小さめの下穴をドリルで開けてから、「リーマー」という精度よく穴を加工できる工具を使って整えるという手順で行います。ボール盤で穴を開ける際は、軸と回転体を組み合わせた状態で、一度に開けるといいかもしれません。

ノックピンは邪道?

ノックピンの本来の用途は部品の位置決めです。ノックピンを軸と回転体の固定に使うという方法は個人製作で少し聞くくらいです。何か理由があるのかもしれませんが、個人製作のロボットに使う分にはいいのではないでしょうか。

独自規格の「Dカット穴」

「Dカット穴」は勝手に付けた名前です。一般に通用する名前ではないですが、悪しからず。由来は、Dカットした軸がぴったりと入る穴からです。

ギヤードモータのDカットされたシャフトに取り付ける部品を設計していたときのことです。止めねじでは直ぐに緩むため他の方法を考えていました。そこで、Dカットシャフトと同じ形の穴を開ければいいんだ! というシンプルな発想のもと生まれた方法です。

今までに思いついた人はたくさんいると思いますが、調べても出てこなかったので、名付けました。通称とかあったら教えてください。

Dカット穴の使い方

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軸と回転体だけで、締結部品は要りません。回転体に空いている穴がDカット穴です。

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回転体に軸を差し込むことでできます。しっかりと固定できます。穴の加工が難しいかもしれません。(ワイヤ放電加工機を使って加工しました)

Dカット穴は自作の回転体にしか使えない

シンプルで締結力を強い方法ですが、自作の回転体にしか使えません。既製品の場合、既に穴が開いていることがほとんどなので、Dカット穴の追加工はできないと思います。自作の部品にはいい方法ではないでしょうか。

まとめ

止めねじ

簡単に固定できるが、締結力は弱い。理想は120度2カ所に平面取り加工とタップ。

キー

締結力は強いが、キー加工が大変。加工設備と要相談。

ノックピン

簡単で締結力も強めだが、ちょっと邪道。ポイントは穴の寸法にH7公差。

Dカット穴

締結部品不要でシンプルだが、独自規格で自作のみに適用可。加工設備と要相談。

あとがき

疑問や悩みは解決できたでしょうか? 作りたい機構が頭に思い浮かんでいても、いざ設計するとなるとわからないことが多くて困るということはよくあることです。設計について調べても、専門用語がわからなかったり、設計の対象が少しずれていたりすることが多く、肝心のロボットの作り方についても情報がほとんどありません。それが、設計でつまずく原因だと思います。こうした悩んでいる人の一助になれば幸いです。

参考文献

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ロボット設計の勘所 ~軸と回転体の締結~」への2件のフィードバック

  1. ピンバック: 女子的なロ技研 | 慶應義塾大学ロボット技術研究会

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