3Dプリンターのお話/Slic3rの重要ポイント解説

慶應ロ技研 Advent Calendar 2018 その1 1日目

はじめまして! 慶應ロ技研アドベントカレンダー初日の記事を任されました1年の Taka です。

F3RCも含め、ロ技研であまり積極的に活動していなかったので、ここに有用な情報を載せて挽回しようと思います()

私 Taka は、色々あって複数台の3Dプリンターを個人で所有しております←
流石に部屋が狭くなってきたので、ロ技研のメンバーに活用していただけるようにと、部室に1台置かせて頂きました。
・・・が使い方がわからないという方が非常に多かったので、スライサーの使い方だけでも、と思いこちらの記事を書かせていただきました。

3Dプリンター

さて、皆様は3Dプリンターをご存知でしょうか?
材料を従来のXY平面だけでなく、Z方向にも積層していくことで立体物を出力できるマシンです。
一般家庭用では、プラスチックなどの材料を溶かし、積み上げていくことでオブジェクトを生成する、FDM (熱溶解積層法, Fused Deposition Modeling) と呼ばれる方式を用いたマシンが最もポピュラーです。
(最近では 光造形方式 のマシンの低価格化も進み、2018年12月現在、新たなスタンダードが生まれつつあります。)

3Dプリント自体は1980年代からある技術です。
しかし約10年前、Stratasys社によるFDMの特許が切れたことにより、爆発的に家庭用マシンが開発されるようになりました。
2018年現在では、2万円を切るマシンすら見かけるほど低価格化が進みました。
この背景には、RepRapプロジェクト という、オープンソースプロジェクトがあるのですが、それはまた別の機会に…

スライサー

3Dプリントを行うには、当然ながら、まずは3Dモデルを用意する必要があります。
PDFやWebページから直接プリントできる、従来のプリンターと大きく違うところですね。

この3Dモデルをプリンターに読み込ませなきゃいけないわけですが、直接は読み込ませることができません。(理由は色々ありますが、省略させていただきます…。多分3Dモデラーさんならなんとなくお分かりいただけるはずです…。)

プリンターに投入するデータは、Gコードと呼ばれる、ヘッドの動きを羅列したテキストファイルになります。
プリンターはこのテキストデータの命令文(コマンド)を順番に実行し、実際にプリントを行います。

3Dモデルを基に、この Gコード を生成するのが スライサー (Slicer) というソフトウェアになります。

読んで字のごとく、3Dモデルを一定間隔でスライスし、平面的になったデータに対して、できる限り一筆書きになるよう、軌道を計算してくれる、非常に かしこい ソフトウェアです。

積層ピッチインフィル (オブジェクト内側につめる材料)、サポート材 といった重要な項目は、スライサーで設定します。

スライサーソフトウェアには、特に有名なものが 2つ あります。

1つが Ultimaker 社による、Cura です。
Ultimaker社が自社のプリンターに向けて開発しているソフトウェアですが、ほかのプリンターにも用いることができます。
非常に最適化が上手で、プリント時間が短くなりやすいというのが特徴です。

2つ目は、Slic3r です。
オープンソースのソフトウェアで、機種を絞らず、様々なプリンターに対して使えるように改善が加えられてきたソフトウェアです。
プリント時間は少し長めですが、機能が豊富であること、UIが非常に使いやすいこと (主観) から 個人的にめちゃくちゃ推している スライサーです。
「スライサー」と読みます 笑

Slic3r の使い方 (ざっくり)

すべての機能を説明すると大変長くなってしまうので、よく使うところだけざっくりと説明させていただきます。
(プリンターによって異なるので、プリンターの設定方法も省略させていただきます…。)

1. オブジェクトを読み込ませる
ドラッグ&ドロップで完了です。
Prusa Edition
の場合、読み込むことのできるファイル形式は stl/obj/amf/3mf/prusa となります。
オブジェクトをドラッグすることでプリントする位置を変更できます。

1.png

2. フィラメント設定
フィラメント(材料)の設定は “Filament Settings” タブから行います。
最も一般的な材料である、PLAであれば、ノズル (Extruder) 200℃, ベッド (Bed) 60℃ の設定で問題ないはずです。
ただ、フィラメントメーカーに指定されているものを用いるのが確実です。新しい材料を購入された際にはここから設定を変更しましょう。

フィラメントの直径は、2018年現在、ほとんどのプリンターで 1.75mm のものを用いているはずです。Diameter 1.75mm に変更しておいてください。(デフォルトは未だに 3mm のままのようです…。)

素材の硬度によって、エクストルーダー(送り出す部品) の、ギアの食い込み量が異なります。
食い込み量が変わると、送り出す量が変化してしまいます。
このような場合に、Extrusion Multiplier (押し出し量) を変更することで補正することができます。
通常は5%以内で充分なはずです。(それ以上の調整が必要であれば、プリンターの故障を疑ってください。)

ほかにも設定画面はあるのですが、通常はこれで充分です。

2.png

3. プリンター設定
“Printer Settings” タブから行います。
プリンターによって大きく異なるのであまり言及しませんが、レベリング作業後、ノズルが高すぎる/低すぎるというようであれば、Z offset を調整します。
0.05 mm 単位 で様子を見て、0.01mm 単位 で微調整すれば通常は問題ないはずです。

Custom G-code 画面から、Gコードのプリント開始/終了部分に挿入されるコマンドを編集することができます。
…が、Gコードコマンドがわからないことには編集できないと思うので、通常は変更する必要はありません。

3.png

4. プリント設定 (重要)
一番重要なプリント設定画面です。2,3 は一度設定してしまえば、ほとんど変更することはない ので、この画面を最も使うことになるはずです。
“Print Settings” タブから変更できます。

4-1. Layers and perimeters

Layer height は、読んで字のごとく、1つ1つのレイヤーの高さ (ピッチ) を設定します。
ざっくりと言うと、LHを 大きく すれば 速くざっくりとしたプリント になり、小さく すると より精細で綺麗なプリント になります。
ただ、過度な設定はプリントの失敗につながります。
ノズルの直径 の 30%-70% で指定するのがよいでしょう。(押し出された材料が若干潰されるようになるため。)
市販のプリンターの多くは 0.4mm ノズルが取り付けられていますので、
– 綺麗なプリントを行いたいときや、有機的な形状をプリントするときは、0.1-0.15mm
– 通常は 0.2mm
– ざっくり速いプリントを行いたいときや、単純な形状をプリントするときは、0.25mm
とするのが私の個人的なお勧めです。

First layer は ノズル直径の 50% 以上にしておくことをお勧めします。
レベリングがうまくいっていなかった際などに、ノズルがベッドに接触することを防げます。

Perimeters は、各レイヤーでの、フチ取りの回数です。
皆さん、絵を描かれるときにはフチ取りをしてから中を塗っていきますよね?
3Dプリントでも同様です。
色の薄い材料を扱うときには、この値を大きくすることで発色が良くなります
また、強度にも大きく関わる設定項目です。

Solid layers は、プリントオブジェクトの 最下部/最上部 で、完全なソリッドな状態とする (フチ取りの中を埋める)、レイヤー数を表しています。
こちらも強度に影響する項目です。
どちらも 3 くらいが、プリント時間と見た目や強度のバランスがもっとも取れた設定であると思います。

4.png

4-2. Infill

ここでは、インフィルと呼ばれる、オブジェクト中心の中空構造の設定を行います。
もちろんオブジェクト全体をプラスチックで埋めることもできるのですが、時間や材料が無駄になります。
この設定をかしこく使って、節約しましょう 😉

6
黄色が Perimeter、赤い部分が Infill です

Fill density は、インフィルの密度を設定します。
フィギュアや置物などの、強度の必要のないプリントや、テストプリントには 10-25% 程度の密度を設定しましょう。

Fill pattern ではインフィルの形状を変更できます。
色々と面白い項目があるので、最初は色々試されることと思いますが、結局 GridHoneycombCubic といったシンプルな形状に落ち着くはずです 笑 (プリントスピードが速いのと、強度が出しやすいため)

Fill angle で、インフィルの向きを変更できます。
強度が必要な部品では、この項目をうまく使わないとすぐに壊れてしまう部品となってしまうこともあります。
通常は 45° のままで問題ありません。

5.png

4-3. Skirt and brim

プリント物自体にはほとんど影響しませんが、プリントを成功させるカギとなる設定画面です。

9
緑部分がSkirt
8
緑部分がBrim

Skirt とは、プリントを始める直前に、ノズルから正しくフィラメントが出てくるようにプリントする、言わば 捨てPath です。
これは以下の画像の通りに設定しておくことをお勧めします。
プリンターや材料によっては、Loops (周回数) を増やさないとうまく出力できないことがあります。

Brimヒートベッドのないプリンターでは必須の機能です。
プリントオブジェクトの底面と一体化し、ベッドとの接着面積を増やすことで、プリント中にオブジェクトが剥がれてしまうことを防ぎます。
通常は 0mm で構いませんが、ヒートベッドがないプリンターや、あっても剥がれてしまうプリントなど では 5-10 mm くらい設定しておくとよいでしょう。
ABS フィラメントではほぼ必須です。
5mm くらいであれば、ベッドから剥がした後、手で簡単に取り除けますが、それ以上小さな値を設定してしまうと、逆に取り外しづらくなってしまうので注意してください。

7.png

4-4. Support material

FDM プリントの最難関、サポート材の設定画面です。
材料を積み上げてプリントしていくFDMの方式上、下に何もない、オーバーハング部ではノズルから出た材料が垂れていしまいます。
したがって、オーバーハング部のプリントは非常に難しく、サポート材がないとプリントできないこともしばしばあります。
サポート材があれば綺麗にプリントできるのかというと、そういうわけでもなく、サポート材があった部分には一定の跡が残ってしまいます。
CADで設計をしたり、3DCGでモデリングをする際には、できる限りオーバーハングが生まれないように設計することが非常に重要です。(※FDMの場合)

11
緑部分がサポート材

Generate support material にチェックマークを入れることで、サポート材を生成します。
基本的にはチェックを入れることで必要な部分にサポート材が生成されます。

Overhang threshold の数値を変更することで、サポート材を生成するオーバーハングの角度のしきい値を与えることができます。
水平方向が 0°、鉛直方向が 90° となります。
例えば、40° を設定したとして、45° のオーバーハングのある部品 をスライスすると、サポート材は生成されません。逆に 50° に設定しておけば、このオーバーハング部に適切なサポート材が生成されます。

Raft はプリントオブジェクトの下面につくられる、いかだのようなオブジェクトです。
この “いかだ” の上に、3Dモデルがプリントされます。
10-20 レイヤー ほどプリントすると良いそうです。
ヒートベッドのないプリンターで役に立つそうですが、下面が荒れるので私は使ったことがありません 笑
(ヒートベッドのないプリンターはこの時期特に苦労します。お勧めしません。)

12
緑部分がラフト

10.png

以上で、よく使う設定項目を大体カバーできたかと思います。
非常に多く感じるかもしれませんが、慣れてしまえば息をするように設定できるようになります 笑
スライサーを使いこなせるようになると、3Dプリントの幅が非常に大きく広がりますよ!

最後に(?)

ロ技研に入り、F3RCの機構班として参加すると、まず初めに3DCADの使い方を学びます。
このCADで作ったデータをもとに、金属加工木工などを行ってロボットを作るというのが従来の方法でした。
もちろん、その方法でもしっかりとした素晴らしいロボットを作ることができます。

ここにプラスとして、3Dプリンターが使えるようになると、手を汚すことなく、CADデータをほぼストレートに現実世界に 召喚する 呼び起こすことができます
CADでデータをつくるだけだと、正直、「で? (・_・)」となりがちです。実際モチベなさそうな人も結構いました。
ここで3Dプリントの技術を持っていれば、実際に設計したオブジェクトを、たったの数クリックと数十分の時間で、手元に寄せることができるのです。非常にワクワクしませんか? 😉

それだけでなく、ある程度の仕事をプリンターに任せられるようになったことで、作業時間の短縮を行うことができたり、従来の方法では絶対に作りえなかった部品などを製作することが可能となりました。

3Dプリントの敷居は、数年前、もっと言えば僕が始めた1年半前に比べて、かなり下がってきています。あとプリンターの価格も()
皆さんも是非、3Dプリンターに触れてみてください 😉

One thought on “3Dプリンターのお話/Slic3rの重要ポイント解説

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中